どうも、森博嗣さんの大ファン歴10年以上のもりひろです。
森博嗣さんのデビュー作にしてメフィスト賞を受賞した理系ミステリィの金字塔『すべてがFになる』の魅力を余すことなく語り尽くします。
ネタバレありませんのでご安心ください。
本書『すべてがFになる』は、森博嗣さんのデビュー作であり、メフィスト賞を受賞した代表作です。
ミステリィファンなら知らない人はいないであろう超名作です。
ドラマ・漫画・アニメなど各種メディア化もされましたので、一度は聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
孤島での殺人。すべてはここから始まった。
孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大助教授・犀川創平と女子学生・西之園萌絵が、この不可思議な密室殺人に挑む。新しい形の本格ミステリィ登場。
講談社BOOK倶楽部(森博嗣ONLINE)より
メフィスト賞は、森博嗣さんを衝撃的デビューさせるために設立されたとも言われているそうです。(Wikipediaより)
本書では仮想現実(VR)のような描写がありますが、現代でこそ違和感はないですが、本書が出版されたのは1996年なので30年近く前…森博嗣さんの発想力すごすぎ!
本書の魅力
「真賀田四季」という圧倒的な天才に戦慄する
真賀田四季はS&Mシリーズにとどまらず、VシリーズやGシリーズなどあらゆるシリーズでも登場する森作品には欠かせない超超超重要キャラです。
「人類のうちで最も神に近い」と言われる天才プログラマー。『すべてがFになる』の1994年7月時点で29歳。情報工学、特に仮想現実、人工知能の領域で研究実績がある他、多様な分野の話題について有益な意見を出せる知能をもつ。(Wikipediaより)
凡人の僕には、天才過ぎる真賀田四季の言動が理解できず、どことなく恐怖すら感じます。
ONE PIECEのエネルの言葉を思い出します。
犀川創平と西之園萌絵も天才なので、真賀田四季と犀川・萌絵が会話する場面はハラハラドキドキ、最大の見どころです。
本書では冒頭から真賀田四季vs西之園萌絵の会話シーンが描かれるので、一気に引き込まれること間違いなしです。
ほら、7だけが孤独でしょう?
第1章 白い面会
彼女を主役とする四季シリーズもあります。
天才は天才にしか書けない・・・森博嗣さんも圧倒的に天才だと僕は思っています。
理系的で超論理的
森博嗣さんといえば「理系ミステリィ」の大家といっても過言ではありません。
本書『すべてがFになる』は理系ミステリィの金字塔とも言われる一作です。
トリックも超論理的です。
ネタバレになるのでトリックについてはお話できませんが、科学的な知識の奥深さや学問を追求する者として矜持のような熱い想いが伺える箇所があちこちに散りばめられています。
ヘリコプターというのはレオナルド・ダ・ビンチの発明だ。飛行機よりも歴史的には早い。人類が飛行機の原理に気づくのに、こんなに時間がかかったのは不思議だね・・・。鳥が翼を動かす時、空気を下に押していると勘違いしたこと・・・これが敗因なんだ。
言葉選びが秀逸
理系ミステリィだからといって決して硬い内容ではないのが、森博嗣さんのすごいところ。
巧みな文章表現で、登場人物たちのウィットに富んだ会話が展開され、文章のテンポが良くてとても読みやすいです。
名言とも格言とも思える言葉の数々に出会えることができます。
自信なんて、小心者のポケットみたいなものです
第10章 銀色の真実
魅力的なキャラ
犀川創平や西之園萌絵(S&Mシリーズ)や瀬在丸紅子(Vシリーズ)など、各シリーズの主人公はみんなとても天才かつ魅力的なキャラがたくさんいます。
脇役キャラだって魅力的です。
犀川創平の講座の助手・国枝桃子も魅力的なキャラの一人。
・外見は背が高く、髪が短いためか、男性と間違えられやすい。
・感情が表情に表れず常に無表情。
・言葉も容赦ないので学生から恐れられている。
能力は優秀なので犀川は国枝桃子を高く評価しています。
「暑いな」犀川は車を出て呟いた。「まったく、暑い・・・」
第2章 蒼い再訪
「暑いとおっしゃったところで、涼しくなるわけではありません」国枝が犀川に近づいてきて言った。
S&Mシリーズ4作目『詩的私的ジャック』の文庫版あとがきで日本近代文学研究者・文芸評論家である菅聡子さんが国枝の魅力を的確に言い表してくれました。
彼女はフォークボールは投げない。ストレート三球真っ向勝負。女らしさとはひかえめなこと、つつましやかなこと。そのような〈女らしさ〉の幻想など、眼光鋭い国枝の前では、しっぽを巻いて退散せざるを得まい。
『詩的私的ジャック』あとがき
哲学的で心が“整う”
森博嗣さんの本には、生きるとはどういうか?という哲学的な深い思索が随所に出てきます。
忙しい毎日を生きる僕たちに、一旦立ち止まって何が大切なのかを考えるキッカケを与えてくれます。
僕が森博嗣さんの本にハマったのもこれが一番の理由です。
森博嗣さんの本を読むと、心が整うような気持ちになるのです。
自然を見て美しいなと思うこと自体が、不自然なんだよね。汚れた生活をしている証拠だ。窓のないところで、自然を遮断して生きていけるというのは、それだけ、自分の中に美しいものがあるということだろう?つまらない仕事や汚れた生活をしているから、自然、自然って、ご褒美みたいなものが欲しくなるんだ。
第2章 蒼い再訪
チャットGPTに聞いてみた
蛇足ですが、チャットGPTに「森博嗣の魅力は?」と聞いてみました。笑
森博嗣(もり ひろし)の魅力は多岐にわたりますが、特に以下の点が挙げられます。
- 独特のミステリー要素: 森博嗣の作品は、単なるミステリーにとどまらず、哲学的な問いや科学的なテーマを取り入れた深いストーリー展開が特徴です。特に「S&Mシリーズ」や「Vシリーズ」などでは、複雑な謎解きと共に、人間の心理や社会問題にも深く切り込んでいます。
- キャラクターの魅力: 彼の作品には、個性的で魅力的なキャラクターが多く登場します。特に主人公たちは、それぞれに独自の背景や思想を持ち、読者を惹きつけます。例えば、「S&Mシリーズ」の犀川創平教授と西之園萌絵のコンビは、多くの読者に愛されています。
- 精緻なプロット: 森博嗣の作品は、緻密に練られたプロットが特徴です。読者を驚かせるような巧妙な伏線や予想外の展開が数多く盛り込まれており、一度読み始めると続きが気になってしまうという中毒性があります。
- 多様なジャンル: 彼はミステリーだけでなく、SFや恋愛、エッセイなど、幅広いジャンルで作品を発表しています。これにより、様々な読者層にアピールすることができ、異なるジャンルでも高い評価を得ています。
- 哲学的・科学的視点: 森博嗣は元々工学博士であり、その知識を生かした作品が多いです。科学技術や数学、哲学など、深い知識と洞察に基づく視点が作品に厚みを加えています。これにより、単なる娯楽小説を超えた知的刺激を読者に提供しています。
これらの要素が組み合わさり、森博嗣の作品は多くの読者にとって非常に魅力的なものとなっています。
異存ございません!
S&Mシリーズとは
本シリーズはN大学工学部助教授の犀(S)川創平と超お嬢様のN大学生の西之園萌(M)絵が主人公で全10作品です。
すべてがFになる/1995年11月→1996年4月
冷たい密室と博士たち/1995年9月→1996年7月
笑わない数学者/1995年10月→1996年9月
詩的私的ジャック/1995年11月→1997年1月
封印再度/1996年2月→1997年4月
短編集・まどろみ消去/1996年春→1997年7月
幻惑の死と使途/1996年7〜8月→1997年10月
夏のレプリカ/1996年8月→1998年1月
今はもういない/1996年11月→1998年4月
数奇にして模型/1997年3月→1998年7月
有限と微小のパン/1997年6月→1998年10月
短編集・地球儀のスライス/雑誌掲載作品および書き下ろし→1999年1月
※初稿完成時期→実際の刊行時期。『すべてがFになる』文庫版解説より
初稿完成時期からも分かるとおり実質上の第一作目(森博嗣さんの処女作)は『冷たい密室と博士たち』でしたが、「デビュー作は派手な方が良い」という編集者の意向で『すべてがFになる』(メフィスト賞受賞)が第1巻として刊行されました。
ミステリィとして楽しめることはもちろんですが、犀川創平と西之園萌絵の関係性や人間としての成長が感じられるなど、単なる謎解きだけでないシリーズ全体のストーリィとしての面白さが魅力だと思います。
森博嗣さん自身も「S&Mシリーズはミステリィではないテーマがコアになっている」と公言しています。
それが何なのか僕にもまだわかりません…もっと読み込まないと!
犀川語録
さいごに、犀川語録を紹介してオシマイにします。
Time is moneyなんて言葉があるが、それは、時間を甘く見た言い方である。金よりも時間の方が何千倍も貴重だし、時間の価値は、つまり生命に限りなく等しいのである。(第7章 琥珀色の夢)
ではまた。
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