どうも、森博嗣さんの大ファン歴10年以上のもりひろです。
S&Mシリーズ3作目『笑わない数学者』の魅力を余すことなく語り尽くします。
ネタバレありませんのでご安心ください。
本書では天才数学者・天王寺正蔵が登場します。
森博嗣さんに天才を書かせたら右に出るものはいません。
犀川創平と天王寺正蔵という天才同士の会話は、非常に抽象的ながら物事の真実を捉えているようでいて、僕のような凡人には理解しようとしても理解しきれない、頭がパンクしそうでスリリングです。
犀川創平と真賀田四季の対峙を彷彿とさせます。
本書は、常識に囚われることなく物事の本質を捉えることの大切さを気づかせてくれる哲学的な要素が詰まった、まさに森博嗣さんらしい内容に仕上がっています。
そして今回の壮大なトリックは、綾辻行人さんの館シリーズを思い出します。
綾辻行人さんが好きな人にもオススメの一冊です。
なお、『すべてがFになる』から『封印再度』の5連作の中で1つ読むなら『笑わない数学者』にしてください、と森博嗣さんは述べています。
消えたオリオン像の謎、2つの殺人。天才数学者が仕掛けたトリックとは?
偉大な数学者、天王寺翔蔵博士の住む「三ツ星館」。そこで開かれたパーティの席上、博士は庭にある大きなオリオン像を消してみせた。一夜あけて、再びオリオン像が現れた時、2つの死体が発見され……。犀川助教授と西之園萌絵の理系師弟コンビが館の謎と殺人事件の真相を探る。超絶の森ミステリィ第3作。
講談社BOOK倶楽部(森博嗣ONLINE)より
『笑わない数学者』の魅力
最後に頭が混乱する
結局、天才数学者・天王寺正蔵とはいったい何者なのか?
最後の最後まで気が抜けないのが本書の魅力です。
最後にゾッとさせられます。
読後に悩まされること間違いなしです。
天才数学者・天王寺正蔵とはいったい何者なのか?
謎を100%は解決してくれない、読者のために考える余白を与えてくれます。
答えや価値観を押し付けない森博嗣さんらしい魅力の詰まった一冊、という印象です。
しっかり100%の答えが欲しい人には少し向かないかもしれません・・・。
「ねぇ、中と外はどうやって決めるの?」(略)「ねぇ、どちらが中なの?」少女がもう一度きく。
第11章 有限と無限の謎
お爺さんは帽子を拾い上げてから、少女に言った。
「君が決めるんだ」
森博嗣作品の魅力
理系的で超論理的
森博嗣さんといえば「理系ミステリィ」の大家といっても過言ではありません。
トリックも超論理的です。
ネタバレになるのでトリックについてはお話できませんが、科学的な知識の奥深さや学問を追求する者として矜持のような熱い想いが伺える箇所があちこちに散りばめられています。
実用に近づくほど退屈なものさ。
第1章 三ツ星館の謎
言葉選びが秀逸
理系ミステリィだからといって決して硬い内容ではないのが、森博嗣さんのすごいところ。
巧みな文章表現で、登場人物たちのウィットに富んだ会話が展開され、文章のテンポが良くてとても読みやすいです。
名言とも格言とも思える言葉の数々に出会うことができます。
テレフォンカードのような薄弱さと、ドーナッツのような幼稚さに、呆れながら、彼は、烏の嘴みたいに頑固に、そう信じている。
第3章 勇者と死者の謎
魅力的なキャラ
犀川創平や西之園萌絵(S&Mシリーズ)や瀬在丸紅子(Vシリーズ)など、各シリーズの主人公はみんなとても天才かつ魅力的なキャラがたくさんいます。
本書で初登場した天才数学者・天王寺正蔵も魅力的なキャラの一人。
自由な思考をすることが最も大切なことだ。それが綺麗にものを見るということなのだ。そして、自由な思考のためには、日常を滅却することが必要だ。それが重要なことだ。いつも、それを思い出しなさい。
第2章 宇宙と数学の謎
哲学的で心が“整う”
森博嗣さんの本には、生きるとは何なのか?という哲学的な深い思索が随所に出てきます。
忙しい毎日を生きる僕たちに、一旦立ち止まって何が大切なのかを考えるキッカケを与えてくれます。
森博嗣さんの本を読むと、なんか心が整うような気持ちになるのです。
僕が森博嗣さんの本にハマったのもこれが一番の理由です。
面白い話をしている時には、いついかなる時でも、決して時間を気にしてはいけませにょ。理解できないというのは、身を引いて、考えるのをやめてしまうからです。面白いことから逃げてはいけません。人間としての鉄則です。
第10章 再現される消失の謎
S&Mシリーズとは
本シリーズはN大学工学部助教授の犀(S)川創平と超お嬢様のN大学生の西之園萌(M)絵が主人公で全10作品です。
すべてがFになる/1995年11月→1996年4月
冷たい密室と博士たち/1995年9月→1996年7月
笑わない数学者/1995年10月→1996年9月
詩的私的ジャック/1995年11月→1997年1月
封印再度/1996年2月→1997年4月
短編集・まどろみ消去/1996年春→1997年7月
幻惑の死と使途/1996年7〜8月→1997年10月
夏のレプリカ/1996年8月→1998年1月
今はもういない/1996年11月→1998年4月
数奇にして模型/1997年3月→1998年7月
有限と微小のパン/1997年6月→1998年10月
短編集・地球儀のスライス/雑誌掲載作品および書き下ろし→1999年1月
※初稿完成時期→実際の刊行時期。『すべてがFになる』文庫版解説より
初稿完成時期からも分かるとおり実質上の第一作目(森博嗣さんの処女作)は『冷たい密室と博士たち』でしたが、「デビュー作は派手な方が良い」という編集者の意向で『すべてがFになる』(メフィスト賞受賞)が第1巻として刊行されました。
ミステリィとして楽しめることはもちろんですが、犀川創平と西之園萌絵の関係性や人間としての成長が感じられるなど、単なる謎解きだけでないシリーズ全体のストーリィとしての面白さが魅力だと思います。
森博嗣さん自身も「S&Mシリーズはミステリィではないテーマがコアになっている」と公言しています。
それが何なのか僕にもまだわかりません…もっと読み込まないと!
犀川語録
さいごに、犀川語録を紹介してオシマイにします。
人間は自分の生き様を見せること以外に、他人に教えることなど、何もないのだ。(第4章 内側と外側の謎)
ではまた。
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