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【大ファン歴10年以上!S&Mシリーズの魅力を語る※ネタバレなし】詩的私的ジャック(森博嗣)

読書レビュー

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どうも、森博嗣さんの大ファン歴10年以上のもりひろです。

S&Mシリーズ4作目『詩的私的ジャック JACH THE POETICAL PRIVATE』の魅力を余すことなく語り尽くします。

ネタバレありませんのでご安心ください。

『すべてがFになる』で衝撃的なデビューを果たした森博嗣さんのS&Mシリーズ4作目が『詩的私的ジャック』です。

本書は、森博嗣作品には珍しくシリアルキラの話です。

圧倒的な天才・真賀田四季の言動には、凡人には理解できず、理解できないことで畏怖の念というか、少し恐怖を感じますが、今回のシリアルキラの犯人の動機も、さっぱり理解できずにゾッとします。

ミステリィ好きの人は”動機”に納得したい、自分の中で腹落ちしてスッキリしたい、という強い思いがあるかもしれませんが、森博嗣作品は”動機”に執着しない傾向がありますので、「モヤモヤする」「森博嗣作品は難解」と思われがちかもしれません。

僕としては、読者に考える余地を残してくれるこの「モヤモヤ感」が魅力でもあると感じます。

犀川創平のこんな言葉からも、森博嗣作品のスタンスが伺えます。

動機なんて、本当のところ、僕は聞きたくもないし、聞いても理解できないでしょう。それに、本人だって説明できるかどうか・・・。こんな欲望が、言葉に還元できるものでしょうか?他人に説明できて、理解してもらえるくらいなら、人を殺したりしない。そうではありませんか?

『詩的私的ジャック』第11章 不快な真実

歌詞を真似た連続殺人事件。犯人は人気ロック歌手?
大学施設で女子大生が連続して殺された。現場は密室状態で死体には文字状の傷が残されていた。捜査線上に浮かんだのはロック歌手の結城稔。被害者と面識があった上、事件と彼の歌詞が似ていたのだ。N大学工学部助教授・犀川創平とお嬢様学生・西之園萌絵が、明敏な知性を駆使して事件の構造を解体する!
講談社BOOK倶楽部(森博嗣ONLINE)より

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『詩的私的ジャック』の魅力

西之園萌絵の葛藤と成長

本書では、犀川創平が海外出張に行ってしまうため、犀川創平の出番が少なめです。(残念!)

西之園萌絵が相変わらず事件にのめり込んでいくのですが、大学3年生の西之園萌絵は、「将来のこと(就職するか大学院に進学するか)」「犀川創平との関係こと」で悩みます。

自分は何がしたいのか?

実は犀川創平のことを何も知らないのではないか?

西之園萌絵が、思い、悩み、葛藤する姿が中心に描かれた作品です。

葛藤した先に西之園萌絵が出した答えとは!?

西之園君、君、大人になったね。見直したよ

第12章 詩的なつづき

西之園萌絵の成長が楽しい回でした。

それにしても、事件にはあまり直接関わっていない犀川創平が、最後の方にちょこっと出てきて颯爽と事件を解決する姿、かっこいいなぁ。

森博嗣作品の魅力

理系的で超論理的

森博嗣さんといえば「理系ミステリィ」の大家といっても過言ではありません。

トリックも超論理的です。

ネタバレになるのでトリックについてはお話できませんが、科学的な知識の奥深さや学問を追求する者として矜持のような熱い想いが伺える箇所があちこちに散りばめられています。

研究ってね。何かに興味があるからできるというものじゃないんだよ。研究そのものが面白いんだ。目的を見失うことが研究の真髄なんだ。

第3章 解決のあとの未解決

言葉選びが秀逸

理系ミステリィだからといって決して硬い内容ではないのが、森博嗣さんのすごいところ。

巧みな文章表現で、登場人物たちのウィットに富んだ会話が展開され、文章のテンポが良くてとても読みやすいです。

名言とも格言とも思える言葉の数々に出会えることができます。

人間って出世するほど無能になるからね。

第8章 沈黙と混迷

魅力的なキャラ

犀川創平や西之園萌絵(S&Mシリーズ)や瀬在丸紅子(Vシリーズ)など、各シリーズの主人公はみんなとても天才かつ魅力的なキャラがたくさんいます。

本書で初登場した西之園萌絵の同級生である金子勇二も魅力的なキャラの一人。

口が悪くて不良っぽいような話し方のわりに、萌絵のことは気に掛けてくれている優しさがあります(それには理由がありますが、ネタバレなのでここでは話せません泣)。

今回はまだほんの少ししか登場していないが、今後、ちょくちょく登場してくる重要なキャラ。

本書では、西之園萌絵の両親が亡くなった飛行機事故について、何かを知っているような意味深な描写がありました。

「飛行機が落ちたときと同じだ」
「え?」萌絵が振り向いた。
金子は机に向かって図面を描いている。
「どうゆうこと?」
「いや、別に」金子は無表情で答えた。

第6章 第三の密室

哲学的で心が“整う”

森博嗣さんの本には、生きるとは何なのか?という哲学的な奥深い示唆が随所に出てきます。

忙しい毎日を生きる僕たちに、一旦立ち止まって何が大切なのかを考えるキッカケを与えてくれます。

森博嗣さんの本を読むと、なんか心が整うような気持ちになるのです。

僕が森博嗣さんの本にハマったのもこれが一番の理由です。

もし、人間に時刻表があるのなら、多分、始発と終着の二つの駅名しか書いていないだろう、と犀川は思う。何も考えなくても、生命はどこにも停まらないからだ。生から死ではない。死から生へ至る快速こそ、一瞬の意識の実体だろう。

第10章 危険な真実

S&Mシリーズの補足情報

本シリーズはN大学工学部助教授の犀(S川創平超お嬢様のN大学生の西之園萌(M)絵が主人公のミステリィ小説で長編全10作品です。短編も2つあります

すべてがFになる/1995年11月→1996年4月
冷たい密室と博士たち/1995年9月→1996年7月
笑わない数学者/1995年10月→1996年9月
詩的私的ジャック/1995年11月→1997年1月
封印再度/1996年2月→1997年4月
短編集・まどろみ消去/1996年春→1997年7月
幻惑の死と使途/1996年7〜8月→1997年10月
夏のレプリカ/1996年8月→1998年1月
今はもういない/1996年11月→1998年4月
数奇にして模型/1997年3月→1998年7月
有限と微小のパン/1997年6月→1998年10月
短編集・地球儀のスライス/雑誌掲載作品および書き下ろし→1999年1月
 ※初稿完成時期→実際の刊行時期。『すべてがFになる』文庫版解説より

初稿完成時期からも分かるとおり実質上の第一作目(森博嗣さんの処女作)は『冷たい密室と博士たち』でしたが、「デビュー作は派手な方が良い」という編集者の意向で『すべてがFになる』(メフィスト賞受賞)が第1巻として刊行されました。

ミステリィとして楽しめることはもちろんですが、犀川創平と西之園萌絵の関係性や人間としての成長が感じられるなど、単なる謎解きだけでないシリーズ全体のストーリィとしての面白さが魅力だと思います。

森博嗣さん自身も「S&Mシリーズはミステリィではないテーマがコアになっている」と公言しています。

もりひろ
もりひろ

それが何なのか僕にもまだわかりません…もっと読み込まないと!

ポイント
  • メフィスト賞は、森博嗣さんを衝撃的デビューさせるために設立された
  • 処女作の『冷たい密室と博士たち』はわずか一週間で書き上げた
  • 当初は『封印再度』を最終巻とした5作品完結シリーズの構想だった
  • 『すべてがFになる』から『封印再度』の5連作の中で1つ読むなら『笑わない数学者』にしてください、と森博嗣さんは述べている
  • 森博嗣さんの奥様が初めて「これは面白い」と言ってくれたのは『詩的私的ジャック』

犀川語録

さいごに、犀川創平の名言を紹介してオシマイにします。

犀川創平
犀川創平

無理じゃないさ。僕だって、今からロック歌手になれるかもしれない。人間、なりたいものには、なれるものだよ。(第1章 最初の密室)

ではまた。

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