どうも、もりひろです。
上場企業の経理部在籍・会計好きサラリーマンの僕が、決算資料を超意訳するシリーズです。
今回は、TOHOシネマズで馴染みの深い「東宝(株)」です。

大学時代に会計士を目指していた僕は、趣味的に決算書を眺めているので、せっかくなら要約しよう、というだけです。笑
有価証券報告書は、100ページを超えることもありますからね…
「決算資料を読みたいけど読む時間がない!」という忙しいビジネスマンや、「決算資料を見て何がわかるの?」という会計初心者の方にも分かるような内容を目指していきます。
損益計算書や貸借対照表はほとんど出てきません!
主に、有価証券報告書・決算説明資料・ファクトブックなどを中心に、余計な解釈は極力控え、客観的な情報のみを記載することを心がけています。
※ 以下、有価証券報告書のことを「有報」と略します。
どんな会社なの?


東宝(株)のことなら俺に任せろ。

ゴジラさん、よろしくお願いします。

東宝無くして俺は無し。俺無くして東宝は無し。
まさに一心同体だからな。

確かに、その通りですね。
小さい頃、僕も良くゴジラの映画を観にいきましたよ。
最近は「シン・ゴジラ」も観ました。
ゴジラさん、大活躍ですね。


早速、東宝の紹介から始めるぞ。
会社 | 東宝株式会社 |
設立 | 1932年8月 |
資本金 | 103億円 |
グループ | 55社(東宝株式会社を含む) |
従業員数 | 単体:352人 グループ会社:3,239人 |
主な事業の内容 | 映画事業(制作・配給、興行、映像ソフト等の制作・販売) 演劇事業 不動産事業 |

創業して90年なんですか!?すごいですねぇ!

だろ?
東宝(株)の経営理念からも、企業として長く存続できるている秘訣が分かるぞ。
「健全な娯楽を広く大衆に提供すること」を企業の存在意義(パーパス)とし、「吾々の享くる幸福はお客様の賜ものなり」を大切な価値観(バリュー)とし、「朗らかに、清く正しく美しく」を行動の理念(モットー)とする
東宝(株)の経営理念

「朗らかに、清く正しく美しく」!僕もそうありたいなぁ。
でも、ゴジラさんの行動とは真逆のような…

ん?何か言ったか?

あ、いえいえ。なんでもないです…(こわい)

東宝と聞けば、俺が守っている新宿のTOHOシネマズを思い浮かべる人も多いだろう。
でも、「TOHOシネマズ(株)」は、東宝(株)のグループ会社の1つで、映画事業の中の「興行」を担う子会社だ。

そういえば、映画が始まる前のオープニングで、岩に打ちつける荒波の映像をよく見ますよね。
あれは、「制作」・「配給」会社としての東宝ということですね。

お、よくわかったな。凄いぞ。
そんなお前に、コッソリ、東宝の社員の平均年収を教えてやろう。
気になるだろ?


いや、コッソリというか、どこの会社も有報に普通に載せてますが…
何で稼ぐ会社なの?


東宝といえば、映画で稼いでいると思っていないか?


え?違うんですか?

甘いな。お前はまだまだ「東宝のシンの姿」を分かっていない。
「シン・TOHO」を教えてやる。

最近、「シン・〜」好きですね…

「シン・TOHO」の姿を知りたければ、セグメント情報を見るといい。

えっ。ゴジラさんが、急に難しい言葉を喋り始めた…
セグメント情報とは、企業の経済活動を業種別や地域別などに分解し、区分ごとの売上高や利益などを表示する情報のことです。
詳細はこちらの記事で解説しています。

東宝は何で稼ぐ会社なのか。
東宝の売上の内訳(比率)を見れば一目瞭然だ。


へぇ。映画で売上の6割を占めている一方で、不動産事業で3割もあるんですね!
知らなかった〜。

やっぱり、企業が生きていくには、リスクを分散する必要があるからな。

なんか、経営者っぽいこと言っている…
儲かっているの?


ぶっちゃけ、東宝さんは儲かってるんですか?
コロナもあるし、厳しいそうですが…

下のグラフで、売上・営業利益の推移を見て欲しい。
今期は売上2,283億円、営業利益399億円となっている。

コロナは確かに強敵だ。
2021FYは相当落ち込んだが、2022FYは少し盛り返した。
でも、コロナ前の水準には至っていないのが現状だ。

セグメント別の売上推移を見ると、映画事業がモロに落ち込んでますね。
“映画は水モノ”という印象を受けます。
一方で、不動産事業は安定的に稼いでいますので、この辺が東宝の強みになるかもしれないですね。


よく分かっているな。
そう!やっぱり、企業が生きていくには、リスクをぶん…

あ、もう分かりましたから。

…

意外と素直だな。
有報では、会社が自分自身の経営状況を分析して記載してくれています。東宝の分析を見てみましょう。
- コロナの厳しい状況は緩和されつつあるが、景気の持ち直しはイマイチ。
- 「劇場版 呪術廻戦」「シン・エヴァンゲリオン劇場版」「竜とそばかすの姫」などが大ヒット。
- スクリーン数は、全国で10スクリーン像の712スクリーン。
- 演劇事業では、「レ・ミゼラブル」「舞台『千と千尋の神隠し』」など、前年度と比べ公演数が増加。
- 不動産賃貸事業では、オフィル市況の変化や商業施設の休館等で厳しい状況下。空室率は0.3%で推移。

僕は最近、映画館に行けていないので、どれも観てないです(泣)
どんな課題に直面しているの?


天下の東宝といえども、ビジネスに課題はつきものだ。

コロナ以外で、東宝さんでも課題があるんですか?

もちろん。例えば・・・
①映画・劇場で、十分な観客動員を得られないリスク。
出演者やスタッフ等のトラブルや撮影中の事故なども、この中の一つだな。


あ〜、それはそうですよね。
一番の課題ですね。
東宝さんとしては、どうやって対処してるんですか?

ここでもリスク分散が基本だ。
幅広い良質なコンテンツで、バランスのとれたラインナップを準備すること。
制作段階のトラブル防止には、管理の徹底と代替策の準備に限る。

映画上映前に、動画撮影禁止の広告が流れますよね。
これもリスクなんでしょうか。

そうだな。
難しくいえば、②知的財産の侵害や不当転売のリスク、となる。
特に海外やインターネットで被害が拡大する可能性がある。
この課題に対しては、事前対策はもとより、顕在化した時には、法的措置をとるなど毅然とした対応を取ることが大切だ。


我々消費者も、ネットで海賊版を観ない、チケットを不当転売しないなど、エンターテイメントを純粋に楽しむ心を持たないといけないですね。

東宝の経営理念「健全な娯楽を広く大衆に提供する」ためにも、みんなの協力が欠かせないんだ。

分かりました。

コロナを契機に、③映画事業のビジネスモデルの変化、が起きていることもリスクだ。
つまり、動画配信サイトで家で視聴することが主流になってしまうことだな。


実は、私も、Amazonプライムばかり観ています…
これ、東宝さんにとっては、一番の課題なのでは!?どうしていくつもりですか?

まずは、動画配信サービス会社の戦略を冷静に分析することだな。まずは敵を知ることが大事だ。
そして、映画の魅力を高めていくこと。
これに尽きる。

僕は今でも、本当に観たいものは、大画面・大音量・大迫力の映画館で観たいです。

あとは、どの企業でも言っているが、自然災害等のリスクもあるぞ。

自然災害…ゴジラさんのこと?

俺のことじゃないからな。
今後の目標は?


いろんな課題があることは分かりました。
東宝さんは、今後どのような目標を掲げているのでしょうか。

2022年4月に「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」を発表した。

あ、有報の最初の方に記載されているやつですね!

その通り。
東宝は2032年に創立100周年となる。
それに向けた長期ビジョンだな。
コーポレートスローガンは「Entertainment for YOU(世界中のお客様に 感動を)」

世界を意識したんですね。
海外展開を積極的にやっていくということでしょうか?

そうだな。
そして、海外展開を進めるにあたって、「アニメーションを第4の柱」にすることを宣言したんだ!


アニメ!まさにクールジャパンですね!!

今後は、映画事業とアニメ事業の両輪で収益を最大化していくことが東宝の強みとなるだろう。

アニメ好きの僕には、大歓迎です♫
さいごに
東宝(株)決算資料の超意訳、いかがでしたでしょうか。
最後に簡単にまとめます。
企業のことを知ると、その商品への熱い想いがわかります。
東宝のことを知って、もっと映画を楽しみましょう!

もう少し深い分析は、また別の機会に解説できればと思っています。
最後まで記事をお読みいただきありがとうございました。
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