どうも、もりひろです。
上場企業の経理部在籍・会計好きサラリーマンの僕が、決算資料を超意訳するシリーズです。
「決算資料を読みたいけど読む時間がない!」という忙しいビジネスマンや、「決算資料を見て何がわかるの?」という会計初心者の方にも分かるような内容を目指していきます。
損益計算書や貸借対照表はほとんど出てきません!
今回は、「(株)コメダホールディングス」です。

コメダに良く行くんですが、モーニングの小倉あんトーストが絶品です。

主に、有価証券報告書・決算説明資料・統合報告書などを中心に、余計な解釈は極力控え、客観的な情報のみを記載することを心がけています。
※ 以下、有価証券報告書のことを「有報」と略します。
どんな会社なの?


コメダの小倉あんトーストを食べると、名古屋で食べた小倉トーストを思い出します。
2016年に名古屋旅行の際に寄った「モーニング喫茶 リヨン」さんです。

ほんと、美味しかったな〜。

実は、コメダは名古屋発の喫茶チェーンなんですよ。

あ、えっと…え、どなたですか?

コメです。
コメダをよく知る、コメです。

こ、コメさん、ですか…(なんか怪しい)

ま、細かいことは気にしないでください。
コーヒーの妖精だと思ってもらえれば大丈夫です。
特別に、私がコメダのことを教えて差し上げます。

コーヒーの妖精…?

じゃあ、まずは、コメダがどんな会社なのか、簡単に概要を説明しますね。

話し始めちゃった…
なに?コーヒーの妖精って?
会社 | 株式会社コメダホールディングス |
設立 | 1968年1月(株式会社コメダホールディングス含む) |
資本金 | 639百万円 |
グループ | 3社(株式会社コメダホールディングスを含む) |
従業員数 | 株式会社コメダホールディングス:8人 グループ会社:468人 |
主な事業の内容 | 喫茶店チェーンを運営する株式会社コメダの持株会社 |
店舗数 | コメダ珈琲店 940店舗 おかげ庵 12店舗 BAKERY ADEMOK 3店舗 KOMEDA is □ 1店舗 (2022年2月末現在) |

「ホールディングス」ってたまに耳にしますけど、なんのことなんでしょうか?
しかも従業員数8名って…

ホールディングスとはいわゆる「持株会社」のことです。
グループ会社の株式をホールド(保有)する会社を、持株会社や親会社といったり、ホールディングスやホールディングカンパニーと呼びます。
持株会社の種類は基本的に次の2つあります。
事業持株会社
…子会社を管理しながら、自らも事業を営む持株会社
純粋持株会社
…製造や販売事業は行わず、グループ会社の株式を保有しながら事業を管理することが目的の持株会社

(株)コメダホールディングスは純粋持株会社にあたりますね。
コメダの事業系統図を見るとわかりやすいです。


従業員8名というのは、有報の提出会社「(株)コメダホールディングス」のことで、僕たちがイメージしているコメダ珈琲店を運営しているのは子会社の「コメダ(株)」なんですね。

その通りです。

でも、先ほどの会社概要だと、コメダ珈琲店の940店舗に対して、グループ会社の従業員が468人って、圧倒的に従業員が少ない気がするのですが?

鋭いですね。
実はコメダ珈琲店の大半はFC加盟店なんです。
なんと店舗数の95%がFC加盟店!
有報には、FC加盟店の従業員は含まれていません。


95%がFC加盟店!?知りませんでした。
確かに、お店によってカフォオレだったりカフェラテだったりして、なんでメニュー違うのかなぁと疑問に思っていました。
メニューもある程度はFC加盟店の裁量に任されているということですね。

コメダの経営理念は知っていますか?
くつろぐ、いちばんいいところ
(株)コメダホールディングスの経営理念

FC加盟店だからこそできる地域に寄り添ったお店づくりこそ、コメダの強みなんです。
地域のお客様に寄り添った運営をすることが、地域密着を大切にする当社フランチャイズの奥義です。
「2022年2月期 統合報告書」より

コメダ珈琲店の店員さんはすごくアットホームな印象です。
年末に、お客さんと店員さんが、「今年もお世話になりました〜」というような会話をしているのを耳にしたことがあります。
フランチャイズ(FC)とは、簡単に言うと、ロイヤルティを払ってノウハウをもらうことです。
FC加盟店は、株式会社コメダにロイヤルティ(対価)を支払って、ブランド名や看板を使う権利や経営ノウハウを得て事業を行います。
株式会社コメダは、ロイヤルティ収入のほか、コーヒーやパンなどをFC加盟店に売る(卸売)ことでも収入を得ています。

何で稼ぐ会社なの?


やっぱりコーヒーで稼ぐ会社です。
セグメントも、「喫茶店FC事業」という単一のセグメントしかありません。
セグメント情報とは、企業の経済活動を業種別や地域別などに分解し、区分ごとの売上高や利益などを表示する情報のことです。
詳細はこちらの記事で解説しています。

FCのメリットってなんなんでしょう?

主に2つあると思います。
①自分たちで建物などの資産や人件費などの固定費を持つわけではないので、コストがかさみにくい。
②ロイヤルティという形でFC加盟店から安定した収入が得られる。

有報にロイヤルティの情報が記載されていますね。
加盟金や保証金など一括で受領するタイプのほか、「月額1席あたり1,500円」という形で定期的に発生するロイヤルティがあるようです。


2021年度は、新型コロナウィルスの関係でカフェ業界も軒並み大幅な業績悪化だったけど、コメダは、同業他社よりも落ち幅は少なかったです。
これは、“地域密着型の強み”と“FC加盟店からの安定的な収入”のおかげではないでしょうか。
儲かっているの?


下のグラフが、売上・営業利益の推移です。
今期は売上333億円、営業利益73億円となっています。


2021年度は新型コロナで落ち込んでいますが、今期にはもう、コロナ前の売上高を超えていますね。

そうですね。
有報から、コメダのコメダによる経営分析を確認してみましょう。
有報では、会社が自分自身の経営状況を分析して記載してくれています。
- 新型コロナの感染拡大や原材料等資源価格の高騰の影響から、先行きは依然不透明。
- 2021年度に好評だった「コメ牛」のほか、ピスタチオや大豆ミートなどの話題性のある食材による限定メニュー・新商品の発売とテレビ・SNSでの露出増加が増収増益に寄与。
- コメダ珈琲店は、新規に49店舗出店。


大人気アニメ「鬼滅の刃」ともコラボしてましたよね。

流行を逃さない柔軟な戦略が功を奏して、テレビやSNSでの露出が増加しお客様が増えたんでしょうね。
お客さんが増えれば、FC加盟店に卸すコーヒーやパンも増えますので、FC加盟店への卸売の増加が一番の増収要因です。


連結損益計算書の注記を見ると、卸売収入の大きさがわかります。


コーヒーの妖精、コメさんの存在に違和感がなくなってきたな…慣れって怖い。
どんな課題に直面しているの?


新型コロナウイルス以外で、コメダさんの課題ってなんでしょうか?

まず、①喫茶店FC事業という単一業態というリスクはあります。
消費者の嗜好が変わって、喫茶店にお客さんが来なくなったら、他の業態でカバーできません。
つまりリスク分散の話です。


カフェ好きの僕には、喫茶店に行かなくなるような嗜好の変化は想像できないけど。
コメダさんはどうやって対応するつもりでしょうか。

経営理念にもあるように「くつろぐ、いちばんいいところ」をはじめとしてお客さまサービスの向上を継続していくことに尽きます。
新商品の開発などですね。

そうなると、人材育成が本当に大事になりますね。

その通りです。
さらに、FC加盟店に依存した収益構造になっていますので、FC加盟店との共存共栄が鍵になってきます。


全店舗のうちFC加盟店が95%を占めていますからね。

FC加盟店との共存共栄を図っていくうえでは、新型コロナウイルスによる外食産業の先行き不透明感や原材料価格高騰などにより②FC出店意欲の減退も懸念されます。

店舗を増やさないと売上も伸びないので、深刻ですね。

コメダでは、新規出店業務に精通したスタッフによる店舗開発部門を設置し、FC加盟店の新規出店支援に取り組んでいるところです。


③FC加盟店のオーナーの高齢化も課題です。
コメダでは、毎月、営業部長会議で情報共有したり、引き続き営業をしたい優良物件は他のFC加盟店へ斡旋等しています。

飲食店だと、バイトテロなんかも心配ですよね。

それは④レピュテーション(評判・風評・評価・信用など)の低下・ブランド価値の毀損という課題になります。
この問題には、社内にコンプライアンス委員会を設置し、内部通報制度などの管理体制をFC加盟店も含めて充実を図っています。


財務的なリスクですと、⑤店舗差入保証金の回収不能があります。
コメダでは、一部のFC加盟店に土地を転貸しています。
地主に敷金・保証金・建設協力金など差し入れていますが、地主の財政状態が悪化した場合に回収できなくなるリスクです。

店舗差入保証金…?
決算書ではどこにでてくるのでしょうか。

店舗差入保証金は、コメダからすればいずれ返してもらえるお金なので「資産」に当たります。
コメダの連結貸借対照表では「その他の金融資産」に含まれています。
「その他の金融資産」の内訳は、ちゃんと注記されています。

今後の目標は?


コメダは2018年に50周年を迎え、これを契機に“心にもっとくつろぎを”プロジェクトを開始しました。

どんなプロジェクトなんでしょうか?

経営理念である「くつろぐ、いちばんいいところ」をさらに進化させるための活動です。
体を休めるよりも、心を休めることを重視し、コメダの「空気感」を磨き続けることが肝心となります。

コメダは、木のぬくもりとゆったりソファーが魅力で、居心地は最高です。

店舗経営において重要な「QSC」のそれぞれの概念をさらに進化させ、「Q:もっといいもの、S:もっといいこと、C:もっといいところ」を経営方針として定めました。

経営方針を踏まえ、2021年4月に策定した5カ年の新中期経営計画「VALUE2025」では、次のような財務目標も定めています。


どの指標も進捗は順調のようですね。
番外編

女性管理職の割合や男性育休取得率が徐々に高くなっているようなので、従業員の働きやすさも向上しているのではないでしょうか。
さいごに
(株)コメダホールディングスの決算資料の超意訳、いかがでしたでしょうか。
最後に簡単にまとめます。
コメダで美味しいコーヒーを飲んでいるときは、忘れてください。笑
最後まで記事をお読みいただきありがとうございました。
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